12月・コンクール備忘録


秋冬もコンクールに参加した方が多く、特に今月は多くの会場で努力の成果を見届けることが出来たので、備忘録も兼ねて。コンクールには、可能な限り応援とサポートに行くようにしていますが、ホールで改めて演奏を聴くと、自分の指導の偏りも見え、毎回新しい発見があります。

 

子供のコンクールをどのように活用するか。様々な意見はあると思いますが、まずコンクール期のみ集中して練習し、その他は閑散期、とならないように気を付けたいところ。

確かにコンクールのような大きな目標に向かって努力することで、モチベーションを上げ、たくさんの経験と学びを得ることが出来ますが、長い目で見ると、本当の実力はコンクール以外の時期に築かれるものだと思うからです。

 

私の生徒さんには、コンクール直前以外は、普段の(コンクールに取り組んでいない時期の)レッスンとほぼ同じ量の宿題をこなしながら、課題曲に取り組むように伝えています。

コンクールがレッスンの主軸となりすぎないよう、基礎的な練習曲を継続しつつ、課題曲をこなせるようになってほしいです。

 

また、結果と講評は、指標と反省材料ととらえ、コンクール後にどのような点に心掛けていくかを方向付けていくもの。同じ場所・時間に聴いた審査の先生方から、多角的な意見がいただけるので、自分の長所と短所を知る良い機会となります。通過・受賞したから良い、落選だったからダメ、のような結果に引きずられた極端な考え方ではなく、そこから何を学んで、これから何を得たいのか、という方に目を向けていけると良いです。


12/5・バッハコンクールの地区予選。昨年春から教えている年中の生徒さんが初コンクールにして、初の全国大会進出を決めてくれました。

初めてレッスンに来た時から高い理解力と良いセンスを持っており、本人の努力と保護者の方のご協力で、着実に力を付けてきました。コンクール挑戦は少し早すぎるかとも思いましたが、幼少期からポリフォニーの音楽をきちんと勉強する機会を持ち、舞台での経験を積むことを目標とし、チャレンジしてみました。

 

幼児部門といえど、コンクール慣れした方が多く見受けられ、輝く音と表現力を持った方が多かったように思います。テンポの統一性が取れているか、バロックの時代に合ったアーティキュレーションをつけられているか、声部をどのように弾き分けるか、そしてそれらがわざとらしくなく、上品に表現できているか。たった数十秒の曲の中で、音楽の基本となるエッセンスが凝縮されているように思いました。

 

余談ですが、審査員席にはなんと私の恩師が……(笑)。私が試されているような、身が引き締まる思いでした。


12/20・日本クラシック音楽コンクール 全国大会。小学校に入る前からコンクールに参加し続けている小3の生徒さんの応援へ。

 

毎回のレッスンでも高い集中力があり、プライドを持って高みを目指す姿勢と、豊かな音楽性で、クラコンは初挑戦ながら全国大会進出を決めました。今回は残念ながら入賞とはなりませんでしたが、予選から全国の3度のホール審査で良い経験をたくさん積むことができたので、本人の自信に繋がってほしいです。

年齢があがるにつれ、「楽しい、明るい」「悲しい、暗い」のように割り切れない作品が多くなります。「切なさ」「やるせなさ」「一筋の幸福」などなど……自分の人生の中で経験したことのない(ひょっとしたら、経験しない方が良いような)、内容が作品の主軸にあると、表現に至るまでも難しい。生徒さんと取り組んだ曲の中にショパンの晩年のマズルカがありました。ショパンの様々なエピソードを読み、想像力をはたらかせ、ショパンの痛みに寄り添い共感しながら演奏したいものです(自戒を込めて書いています……)。

 

時期的に学生コン、ショパコンinAsiaなど他のコンクールと並行して受けることも多いクラコン。私の生徒さんもその部類でした。自由曲のコンクールでは、曲自体の難易度と演奏の完成度のバランスも悩ましいところです。

 

ホールで十数人の演奏を聴くことができましたが、小学三年生という括りの中での体格差に驚きました。体の成長の個人差はありますが、10歳前後は大人の体格へと移り変わり始める時期。指の独立と強化、腕や手首の脱力、身体の使い方をより研究し、あと一歩音がクリアに聴こえてくると良いなと思いました。


12/26・再びバッハコンクールの地区予選。今回は昨年秋からプライベートでレッスンしている姉弟が参加しました。

お姉さんの方は安定感のある演奏で、見事全国大会進出を決めました。

課題曲は3拍子の舞曲。それぞれの拍が持つ重さ・軽さや、調性による音色の変化を最後まで突き詰めていました。本番では、前週で試演会で演奏したものより格段に響きの豊かさがあった演奏でした。同時に次への課題も見つかり、全国大会に向けて更にレベルアップしてほしいです。

 

弟くんは幼児部門で参加、残念ながら結果は付いてきませんでしたが、良い挑戦でした。まだピアノを習い始めて9か月の年長さんですが、ものすごい勢いでレッスンでの課題をクリアし、進んできました。

レッスンでは長くても数週間で次の曲にいってしまいますが、一曲を深く長く勉強できる機会を持つには、コンクールは適しています。今回はクオリティを上げて磨き切ったものを舞台で弾く、という経験を積むことができたので、この悔しさを糧に次のステージでも頑張ってくれることを期待しています。


12/28・全日本ピアノコンクールの全国大会。ソルフェージュを見ている中3(音楽高校受験生)の生徒さんの応援に。

 

ホールでの審査員と、録画によるオンラインのハイブリット審査。リアルタイムでYoutubeでも演奏が配信されるという、イマドキなコンクールです。

生徒さんはピアノをうまく響かせられていたように聴こえました。層のようになっている曲で、それぞれの声部の役割を弾き分けなくてはいけない、難しい作品によく取り組まれているなという印象です。

 

他の出場者の演奏もホールで聴くことが出来ましたが、唯一ハイドンのソナタを演奏した出場者の鮮やかな演奏が映えていました。みずみずしく透き通る音色と、オーケストラの空気感、主題による音色の変化や形式の構築力が素晴らしかったです。

こちらも自由曲のコンクールで、ロマンや近現代から選曲する方が大多数でしたが、古典派でもきちんと作りこんだものであれば、輝きは霞むことはないのだなと痛感しました。


(余談)11/30・全日本弦楽コンクールの伴奏へ。桐朋時代の同級生との共演で、第3位に入賞されました!

↑の弦楽器部門で、こちらもホール審査と録画審査のハイブリッド。全国大会は杉並公会堂大ホールで行われました。あんなに広いホールで伴奏するのは初めてかもしれません……。響き豊かな空間を独占できた贅沢な時間でした。曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。私の永遠の憧れの曲です。

2022年12月 葛飾アイリスホール

応援に行ったホールの一つ、アイリスホール。数年ぶりに中に入り、ピティナの思い出が蘇ってきました……。