ブルグミュラー 25の練習曲 全曲録音を通して考える


今月はじめ、サクライ楽器さんの企画で、ブルグミュラーの《25の練習曲》op.100を全曲レコーディングしてきました。
毎日1曲ずつ、Youtubeのサクライ楽器さんのチャンネルにアップされています。
(私が一番好きな曲の《アヴェ・マリア》のリンクを貼ってみます^^)

思い返すと、私自身が子供の時は数曲しか取り組みませんでした(アラベスクと貴婦人くらい)。今回は演奏はもちろん、プログラムノートや解説を書いたりと、改めて勉強する良い機会になりました。備忘録を兼ねて、少し長いですが改めて書いてみます。


ブルグミュラー家はドイツの音楽一家として有名でした。

ピアノを学ぶ日本の子供たちが一度は通る《25の練習曲》を作曲したのはヨハン・フリードリヒ・フランツ・ブルグミュラーという人です。
彼の父は指揮者でワイマールの劇場監督などを務め、現在まで続くニーダーライン音楽祭を創設しました。
また、彼の弟アウグスト・ヨーゼフ・ノルベルト・ブルグミュラーはピアニストとして名を馳せ、ピアノ曲や室内楽、交響曲、協奏曲を残すほどの作曲家でもありましたが、26歳の若さで亡くなってしまいます。彼の早すぎる死に対し、同い年のシューマンは「シューベルトの早世以来、ブルクミュラーの早世ほど悲しいことはない」と文章を寄せ、メンデルスゾーンは《葬送行進曲》op.103を書いたそうです。

ヨハン・フリードリヒ・フランツ・ブルグミュラー(以下、ブルグミュラーと表記します)は、1806年ドイツのレーゲンスブルクに生まれ、26歳でパリに移住します。演奏家や作曲家としては、弟のノルベルトほど名を残していなかったようですが、素晴らしいピアノ教師として人気でした。


改めて《25の練習曲》の楽譜を読んでみると、エチュードとして、そしてひとつの作品として、とてもよく考えられているように思います。
まずひとつひとつに付けられているタイトルでイメージを広げることが出来ます。一部誤訳とされているものもありますが、ついエチュードということを忘れてしまいそうになります。
25曲中6曲(アラベスク、別れ、バラード、甘い嘆き、気がかり、タランテラ)が短調で書かれており、子供用のエチュードとしては割合多めになっていることも、ただテクニックのためだけに書かれたものではないことを示唆しているのではないでしょうか。
音域は曲が進むにつれ次第に広がっていき、後半には高度なテクニックも要求されます。《つばめ》に多用される手の交差や《帰路》の連打は特に、とても難しいですね!
また、《25の練習曲》の中でmf やfで始まる曲はわずか2曲(スティリエンヌ、タランテラ)で、それ以外はpかppで始まっています。「弾き始める前から音楽に集中して!」というブルグミュラーからのメッセージでしょうか。
(※なお、24番《つばめ》には冒頭の強弱の指示がありません)

今回の録音は25曲全てを通して演奏したのですが、曲と曲の接続の仕方も工夫して並べているのかも?と思った箇所がいくつもありました。
もちろん番号が後ろに行くに従って難しくはなっているのですが、それだけの基準で曲の順番を付けたとは思えません。
例えば3番《牧歌》の最後と4番《小さな集会》の冒頭は、高さは違えど同じソの音だったり(16番《甘い嘆き》と17番《おしゃべり》にも同じことが言えます)、
14番《スティリエンヌ》と15番《タランテラ》、19番《アヴェ・マリア》と20番《タランテラ》は、前の曲の最後の和音が次の曲のドミナントの機能を果たしていたり、
12番《別れ》と13番《なぐさめ》はどうしても同じ世界観を持つ作品と捉えてしまったり……。
ピアノを練習する子供たちにとって避けては通れないブルグミュラーですが、意味深〜!なことがたくさんあり、とても面白かったです。

今回の録音では、作品としてどう美しく弾くか。。。を目指して演奏してみました。お手本のような演奏ではないかもしれませんが、色々と挑戦できた気がします。
想像以上に苦しみました。とにかく音数が少ないので、いろいろと試されている感じ(笑)
レコーディングが終わってから、ブルグミュラーの《18の練習曲》に取り掛かっています。私自身が子供の時には、25の練習曲よりこちらの曲集の方から多く取り組んでいた印象があります。
意外にあまり演奏頻度は多くありませんが、大好きな曲がたくさんあるので、また弾けたらいいなと思っています(懲りない)。
サクライ楽器の皆様、素敵な機会をありがとうございました!